Geist

“Amplify the Sense of Wonder”

Geist(発音:ガイスト)とはドイツ語で「こころ」、「精神」または「幽霊」の意。

イギリスの哲学者ギルバート・ライルが、デカルト以来の心身二元論を揶揄して「機械の中の幽霊(the Ghost in the Machine)のドグマ」と言ったのは既に20世紀も半ばのこと。心身二元論とは「こころ」と「からだ」を別個で対等でない存在とする見方、つまり精神が身体をコントロールする主人であるという考え方です。

現在では「こころ」と「からだ」は一体で不可分の存在であり、何が何をコントロールしているかというのは、奥の深い複雑な問題だということが分ってきました。しかし、想像力の分野では、二元論は未だ健在です。たとえば人の意識をデータとして捉える人が出るようになり、「永遠の命」という概念がまたまた復活しています(ちなみにアニメ『攻殻機動隊』の英題は”Ghost in the Shell”です)。

テクノロジーは私たちの考え方をデカルト式の二元論に後戻りさせつつあるのでしょうか?それとも、「こころ」と「からだ」そして人間の能力について考える、新たな探求の場を生み出そうとしているのでしょうか?

Geistでは、人間の能力についてよりよく理解し、遊び心を持ちながら人間の能力拡張を目指すためにテクノロジーを使うことを志しています。認知科学、心理学そして社会科学の知見をウェアラブルセンサーや深層学習といったテクノロジーと組み合わせることで、たとえば初めて自転車に乗れた時、初めてダイビングした時に感じたような、驚きと好奇心(センス・オブ・ワンダー)を刺激すること。それが目標です。

テクノロジーはいつだって私たちの視野を広げる役割を果たしてきました。デジタル・テクノロジーも同じです。一緒にセンス・オブ・ワンダーを高めていきましょう。

 

ディレクター

カイ クンツェ

イニシアチブ(現在進行中)

  1. 1. アイウェアコンピューティング

    アイウェアコンピューティングはエキサイティングな研究分野の一つです。人間の感覚器のほとんどは頭部に集中しています。「目は心の窓」という格言は真理を突いているのかもしれません。初期のめがね型コンピュータ機器は高価で嵩張り、バッテリー寿命も短いといった問題がありましたが、私たちのチームでは J!NS MEMEのように本当の意味でウェアラブルな機器を用い、軽量で低電力、使いやすく外見もスマートな新世代スマートアイウェアを目指して研究を進めています。

  2. 2. 「こころ」の深層学習

    このプロジェクトの課題は、人の認識能力の浮き沈みを予測することです。各種の生理信号と行動パターン記録をデータとし、深層学習を用いた予測を行います。画像認識、顔認識、囲碁対局などといった人の認識能力を模倣したり超えようとしたりするために深層学習を用いるのではなく、私たちのチームでは人にとってのエンパワメントという考え方をとり、深層学習を人の「こころ」を深く学ぶために使います。

  3. 3. ソーシャルスペースでの効果的なVR/AR/MRインタラクション

    ウェアラブルインタラクションとモバイルインタラクションでは、ボタンやタッチ、空中ジェスチャといったものが主流です。仮想現実(VR)や拡張現実(AR)においては、ユーザインターフェイスのデザインは開拓期にあります。私たちのチームはもっとさりげなく、目立たない、人前でも気にならない効果的なインタラクションの開発に向け研究を進めています。