慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科附属メディアデザイン研究所(所在地:横浜市港北区、所長:石戸奈々子 以下、KMD研究所)は、「B Lab」を開設し、7月7日よりその活動を開始しました。今後B Labは、テクノロジー、デザイン、政策、教育を横断しながら、社会課題の解決と新たな価値創出を目的とする実践的研究・社会実装拠点として活動を開始します。

1. 設立の背景
近年、AI・XR・IoT等の技術革新により、社会構造そのものを再設計する可能性が広がっています。一方で、優れた技術や研究成果が存在していても、社会実装や社会受容に至らないケースが多く、研究と社会の間に大きなギャップが生じています。B Labは、この課題に対し、「構想」「実証」「社会実装」を一体化した新しい研究モデルを構築することで、未来社会の実現を推進します。
(1)B Labの位置づけ
B Labは、研究、実証、社会展開を同時並行で推進する「社会変革の実行基盤」です。研究成果を論文や概念提案にとどめることなく、社会実装までを見据えた実践的な活動を行います。
(2)B Labの基本コンセプト
本センターは、従来の大学内研究拠点の枠を超え、以下のコンセプトに基づく新しい研究・実装モデルを構築します。
● 世界中の大学・研究機関との分散型研究ネットワーク
国内外の大学・研究機関・企業と連携したグローバルな研究コミュニティを形成します。
● 世界各地をフィールドとする実証型研究
都市・教育・地域・企業など、多様な環境を実証フィールドとします。
● 「だれでも研究員」という開かれた参加構造
研究者に限定せず、企業人、クリエイター、市民等の参画を可能とします。
● イノベーション × インキュベーション(i²モデル)
InnovationとIncubationを統合した循環型モデルを構築します。
(3)「B」に込めた意味
B Labの「B」は、複数の概念を統合したものであり、本センターの思想と活動原理を象徴しています。
ア)越境(知の分断を前提とせず、横断的に接続する研究モデル)
・Boundary:分野・組織・国境といった既存の境界を越える
・Borderless:領域や立場に縛られない開かれた構造
イ)接続(多様な主体が交差し、新たな価値が生まれるプラットフォーム)
・Bridge:異なる領域や主体をつなぐ
・Base:共創のための基盤となる
ウ)創造(未来を構想するだけでなく形にする実装志向)
・Build:未来を具体的に構築する
・Beyond:既存の延長ではない新たな可能性を切り拓く
エ)変革(社会の前提そのものを更新するイノベーションの推進)
・Breakthrough:既存の枠組みや前提を突破する
B Labとは、境界を越え、つなぎ、未来を構築し、社会の前提を突破するための拠点である。
2.具体的な活動計画
(1)未来ビジョン創出・社会構想研究
本センターは、フロンティア技術、文化・表現、人間、社会システムを横断し、あらゆる領域において未来社会の構想と実装を行います。
これら3領域は独立したものではなく、相互に交差しながら新たな価値を創出します。
(ア)Frontier:フロンティア技術領域(社会変革を駆動する最先端技術領域)
・生成AI、ロボティクス、XR、IoT、6G
・量子技術、宇宙技術、フュージョンエネルギー
・モビリティ、セキュリティ、医療AI
・データ・ネットワーク・計算基盤 等
(イ)Creative:文化・人間・表現領域(意味・体験・価値を創出する領域)
・ポップカルチャー/コンテンツ/エンタメ
・ニューロダイバーシティ、ウェルビーイング
・メディア・コミュニケーション
・アート
・身体拡張、超人スポーツ、eスポーツ
・価値観・文化形成
(ウ)Social:社会システム・制度・実装領域(社会構造をつくる領域)
・教育
・都市・地方創生
・政策・ガバナンス
・ソーシャルインパクト、SDGs
・新産業・ビジネスモデル創出
・テクノロジーと経済の関係
・社会実装・市場形成
AIから宇宙、量子、モビリティ、医療、エンターテインメント、eスポーツに至るまで、領域を限定せず多様なプロジェクトを同時並行的に推進します。
(2)実証・プロトタイピング
本センターは、構想した未来を実環境において検証・実装する実証型研究を推進します。
• 実証フィールド(都市・教育現場・企業・地域社会等)におけるプロジェクト実施
• テクノロジー等を活用したプロトタイプの開発
• 企業・自治体との共同研究による社会実装の推進
(3)共創プラットフォーム構築(Co-Creation & Incubation)
本センターは、研究成果を社会に実装するために、多様な主体との共創と、プロジェクトの事業化・発展を支えるインキュベーション機能を一体的に推進します。
• 企業・自治体・研究機関との共同研究による共創エコシステムの形成
• 分野・組織・国境を越えた越境型チームの編成(「だれでも研究員」モデルの実装)
• 研究・プロトタイプ・事業化を接続するインキュベーション機能の構築(i²モデルの実践)
• 学生・若手人材を含む実践型人材育成プログラムの実施
(4)社会発信・文化形成(Adoption & Cultural Transformation)
本センターは、研究成果を社会に広く届けるとともに、対話と体験を通じて社会受容を促進し、新たな価値観と文化の形成を推進します。
• 展示・イベント・メディア等を通じた成果の社会発信
• 社会受容性の向上に向けた対話・体験設計
• 新たな価値観・文化・社会的規範の創出
• 未来社会のビジョンを共有する公共的プラットフォームの形成
本センターは、特定領域に閉じた研究拠点ではなく、領域横断的にプロジェクトを生成し続けることで、未来社会を構想し、実装するための中核拠点です。
補足)
本センターは、iUにおいて展開されてきたB Labの研究・実証活動をKMD研究所に2027年4月までに完全に移管し、発展させるものであります。既存のプロジェクト、ネットワーク、知見を継承しつつ、KMDの研究基盤と統合することで、より高度な研究と社会実装を推進します。
3. B Lab 石戸奈々子 教授からのコメント

B Labは、ありとあらゆる境界を越えて、人と知をつなぎ、未来社会を構築し、社会の前提そのものを更新していくための研究拠点です。ワクワクする未来を多様な人々と共創しながら、領域横断的に次々とプロジェクトを生み出し、研究と社会実装を両輪として、新たな社会価値の実現に挑戦していきます。このたび、KMDのDesign・Technology・Management・Policyを横断する教育研究基盤、そして社会実装を重視してきた実践知とB Labが融合することで、未来構想から実装までをさらに加速できることを大変嬉しく思います。
お問い合わせ先
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科附属メディアデザイン研究所 B Lab
メールアドレス| info@blaboratory.org