
樋口冴子
日本
修士2年
参加プロジェクト:OIKOS

保坂賢吾
日本
修士2年
参加プロジェクト:OIKOS

フー・シンユー
中国
修士2年
参加プロジェクト:Global Education

タナー・パーソン
アメリカ
修士2年
参加プロジェクト:Embodied Media

松園敏志
日本
修士2年
参加プロジェクト:Embodied Media
ー皆さんがKMDへの入学を決めた理由を教えてください。
樋口:私は大学の法学部に在学中、スタンフォード大学のd.スクールでデザイン思考に出会い、その興味を深めて社会に役立つ仕組みを追求したいと考えていたのですが、それにKMDがぴったりだったのです。
保坂:僕はニュージーランドの大学で経済を学ぶ一方、演劇とスタンダップコメディの分野でも活動していたので、その両方から社会的な問題に取り組めるKMDを選びました。
フー:アメリカの大学在学中に慶應義塾大学に交換留学をして以来、日本で働きたいと考えるようになり、そのためのスキルを身につけ、専門の言語学を活かしたくて入学しました。
パーソン:カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校では認知科学と心理学を学んでいました。KMDを選んだのは、バーチャルリアリティのデザインをもっと学びたかったことと、それまで知らなかった文化や環境に身をおいてみたいと考えたからです。
松園:工学系エンジニアリングを専攻していた大学在学中、KMDでインターンシップをする機会がありました。そのときに、デザインが社会でどのように役立ち、誰を幸せにできるのかを考えてものづくりをする充実感を経験したのがきっかけでした。

ー普段はどのような生活を送っていますか?
樋口:1年目は10月まで毎日、必修授業があるのでグループワークとディスカッションの日々でした。秋学期以降は各自が取り組むリアルプロジェクトがメインになります。私は奥出直人教授の「OIKOS」に所属していて、勉強会やミーティングのために1週間のうち5日は学校にいますし、企業との打ち合わせで外出も増えるからハードです。
フー:研究室によってだいぶ違うよね。私は大川恵子教授の「GlobalEducation」に取り組んでいて、教育研修をデザインするためのワークショップ運営が多いのでチームワークは欠かせません。だからたいてい大学にいます。大学にいると、いろんな人をつかまえて専門的な意見を聞けるし、情報交換ができるのです。
パーソン:僕は大学にあるプロジェクトルームのような専用設備も活用するけれど、ほとんど渋谷にある身体性メディアの「Haptic Design Lab」(触覚のデザインラボ)にいることが多いかな(笑)。KMDの「イノベーションパイプライン」の授業では、ポイと呼ばれる伝統的なパフォーマンス・ジャグリングの道具を使ってバーチャルリアリティ体験をするという新しい挑戦もあったし、企業の難しい課題へ取り組むプログラムもあって、目まぐるしく感じることもありました。
松園:学会に論文を投稿する直前は1週間も家に帰れないほど忙しいこともあるよね。僕が所属している南澤孝太准教授のプロジェクトは、KMDと日本科学未来館が活動拠点なので、週に2〜3日はお台場へ通っています。そこでは企業の人たちと一緒に働く社会性が求められるから、大学にいるのとは違った刺激があります。
ー印象に残っているイベントはありますか?
松園:入学直後に実施される2泊3日の合宿「クラッシュコース」が特に思い出深いです。異なるバックグラウンドを持つ人たちと出会ってすぐに、力を合わせて何か新しいことを生み出すことを実体験で学びました。それに、先生方も含めてみんなお酒が強くて(笑)。明け方まで飲み続けても、朝9時にはコースをスタートするという、オンオフの切り替えがはっきりしている場なんだと実感しました。
フー:「クラッシュ」には、入学者の固定概念にショックを与えて砕きたいという目的もあるよね。難関にチャレンジして、試練を乗り越えるための合宿だったと思います。
樋口:私はKMDフォーラムの運営に携わったことが良い経験になりました。11月開催のために6月から準備を始めて、広報やデザインを含めた実施までのすべてを自分たちの手でつくり上げるイベントは、学生が責任を持って働かないと成立しません。研究室の枠を超えてコラボレーションできたのは達成感がありました。

ー海外留学生との交流はスムーズですか?
パーソン:一緒にプロジェクトを遂行する目標があれば、言葉の壁を感じることはさほどないけれど、もっと日本語を勉強しなくてはならないことは間違いない! リアルプロジェクトでは、英語と日本語が混じり合いながらもうまくいくことも多いからね。
フー:私自身も留学生ですが、KMDに入ってからスタンフォード大学でのデザインのプログラムに参加して、プロトタイプまで完成させました。KMDのなかに限らず、お互いに協力する姿勢はどこでも必要ですよね。
樋口:私はGIDプログラムに約1年間参加して、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートとニューヨークのプラット・インスティテュートで半期ずつデザインを勉強してきました。日本と全く違うプロジェクトの進め方は刺激になるし、留学生が多いだけじゃなくて自分も海外留学を経験できるのはKMDの一番良いところかもしれません。
保坂: 僕自身はCEMSプログラムを活用して、1学期目はカナダ、2学期目はシンガポールのビジネススクールに3カ月ずつ通いました。31カ国の学生と交流しながら、自分の強みや弱点を客観的に把握できたことで、今後の方向性も見えて貴重な経験になりました。

ー学業と仕事を両立している人はいますか?
樋口:1割くらいの学生が働いていると思う。起業したワーキングマザーもいるし、他大学に比べると多いほうだと思います。
フー:在学中に起業する人もいるし、専門性を活かした研究を深めて、論文にまとめる目標を定めている人もいて、仕事のために人脈を築く人もいます。
松園:忙しくても、授業はすべてビデオアーカイブで見られるから続けられるんだと思う。過去の授業にもアクセスできるから、とても便利。逆に、自分の論文発表も残るのは緊張感があるけど(笑)。

ー入学前と後で感じたギャップはありますか?
パーソン:大学院だからひとりで研究することが多いイメージだったけど、実はコミュニケーションスキルが上がりました。言葉だけじゃなく、プレゼンテーションで自分のアイデアを効果的に表現するといった、ビジネスで役に立つようなものです。それと、誰もが違う才能を持っていて、自分だけではできなかったことも協力し合って実現できる素晴らしさは想像以上でした。僕自身で言えば、ソフトウェアができるだけじゃなくて、ハードまで考えるようになったことも大きいです
フー:私も同感です。入学前はデザインのスキルがないと困るかと思っていましたが、実際には周りの力を借りながらプロジェクトを進めればいいんだとわかりました。学生同士で助け合えます。
松園:良い意味で意識が高い人が多くて、みんな積極的ですね。
樋口:入学当初は、これほど考え方が違う人がいるなんて!と衝撃を受けましたが、自分が常識だと思い込んでいたことが通用しない分、新しい価値観を受け入れたときに成長を感じられました。
ーこれからKMDを目指す人へアドバイスはありますか?
樋口:自分が変わることを恐れないのが大切です。こだわり過ぎず、多くの考え方に触れて、興味を持って、変わっていく体験を楽しんでほしいですね。
フー:日吉は楽しくて、外国人にも親切な街なので、KMDの近くに住むことをお勧めします(笑)。留学生にとっては、奨学金の種類も豊富だし、構内にクリニックも併設されているから、安心です。KMDは24時間空いていて、いつでも活動できる環境があります。
保坂:リアルプロジェクトを選ぶときには、自分がやってみたいことと照らし合わせてよく考えてください。僕は入学後にデザイン思考のプロジェクトへ変更したのですが、それまで経験のなかった領域なのでとてもチャレンジングでした。また、研究室の雰囲気を知った上で決めることも大切だと思います。
ー最後に、皆さんの将来の夢を教えてください。
樋口:デザイン思考を活かしたイノベーションやサービスデザインに関する知識とスキルを活かして、人や社会に役立つ国際的な仕事をしていきたいと思っています。
フー:KMDの先生になって、グローバルエデュケーションで培ったワークショップを次世代へバトンタッチしたいです。実は4月から出版社への就職が決まっていますが、KMDに戻って研究を続けたい気持ちも強いです。
保坂:ざっくりしていますが、何かひとつ、人生の中で成し遂げたいです。卒業後に働く予定のIT企業でも、あるいは別のフィールドでも、自分が納得いくまで突き進んでベストを目指します。
パーソン:今年日本で会社を起こしたので、卒業後はその仕事をします。将来的にはアメリカに戻って働くかもしれないけど、どこにいたとしてもここと同じように国際交流をしていきたい。これまで存在しなかったタイプのコミュニティを実現させるのが夢です。
松園:世界の人々に親しまれる「新しい何か」を生み出したい。KMDで取り組んだことと自分の専門分野であるテクノロジーを合わせて、いまの世の中に存在しないものをつくり上げてみたいです。

※本記事は2017年11月に取材したものです。