KMD学生座談会2019

KMDで学ぶ日々をどのように過ごしている?
将来の夢は?
学生たちが本音で語ります。

刑部友理

日本

修士2年
参加プロジェクト:Policy Project(Digital Kids)

中村 開

日本

修士2年
参加プロジェクト:Embodied Media

シュテファニー・シャーク

ドイツ

修士2年
参加プロジェクト:CREATO!

イレイン・チェック

アメリカ

修士2年
参加プロジェクト:Embodied Media

小宮一恭

日本

修士1年
参加プロジェクト:Policy Project(Digital Kids)

ーKMDへの入学を決めた理由を教えてください。

刑部:大学時代、教育学部で音楽を担当するなかで、もっと子どものクリエイティビティを高めていく活動をしたいと考えていました。そんなときに石戸奈々子教授の書籍と出会い感銘を受け、海外の先進事例を学んだり、クリエイティブワークショップなどを実践したいと思ってKMDに入りました。

中村:東京高専の4年次にインターンシップとして約1カ月間KMDに通っていました。KMD生と一緒に触覚に関する研究をし、国際学会にも行きました。そのときに「大学院って面白いな」と思い、入学を決めました。

シャーク:小さい頃から日本のアニメやビジュアル系バンドが好きで、日本語も勉強していました。交換留学で1年間慶應義塾大学に通い、ほかの留学生から「KMDが面白い」という噂を聞いていたんです。ビジネス、デザイン、エンジニアなど色々な分野の人が集まっている環境も魅力的でした。もともとデザインにも関心があったので、KMDでなら日本語とデザインへの関心の両方を満たすことができると思ったんです。

ーKMDではどんな研究をしていますか。

チェック:私は、年齢を重ねることを積極的にとらえる、ポジティブ・エイジングを研究しています。現在は高齢者向けのコミュニケーションツールを開発しています。例えば、高齢者のユーザーが語る昔話を録音し、触覚や音声のフィードバックを付け加えて、思い出を追体験したり、それを誰かと共有できるような「アルバム」をつくっています。

小宮:STEAM教育(科学、技術、工学、数学に芸術を加えて統合的に学習する教育手法)を研究しています。僕は高専出身なので高専というフィールドを使って、例えば高専の学生と小学生をマッチングしてプログラミング教育をもっと面白くするような研究を進めています。

中村:ものの表面の触り心地を振動としてデータ化し、動画や音声などと同じように共有する方法を研究しています。例えば、猫カフェで猫を撫でたときの感覚を、動画と一緒に保存してシェアするといったプロジェクトは面白かったです。

シャーク:ビジュアルのないARゲームを開発しています。ビジュアルの代わりに、振動や温度、音声など複数の感覚を組み合わせて、イメージや感動を発生させたり、人をナビゲーションする研究をしています。

刑部:今は、英国など海外の事例を参考にしながら、日本の未就学児にプログラミング教育を取り入れることを研究しています。保育園との共同研究で、実際に子どもたちにプログラミングの授業をしながら、現場の先生たちが活用できるカリキュラムや教材をつくっています。

ー学生生活はどんな感じでしょう?

刑部:私は研究と論文執筆のあいだに、海外の教育ツールをプロモーションする会社でPRの仕事をし、さらに学内のスタジオで楽器や撮影機材などを管理するアルバイトなど、色々なことをしています。とても忙しいです(笑)。

中村:Embodied Media の拠点は日吉のほかに渋谷(Living Lab Shibuya)とお台場(Cyber Living Lab)にもあって、例えば、渋谷で企業とミーティングをした後、日吉に戻って実装作業をするなど、機材や会議に合わせて移動することが多いです。1日に3拠点を回ることもあります。

小宮:僕は研究活動のほかに、Keymakersというブロックチェーン開発者向けのコミュニティの副代表を務めていて、今はその活動がメイン。開発者向けに勉強会を開いたり、事務局を立ち上げたり。基本的には教材をつくって、教育することを中心とするコミュニティなので、自身の研究テーマでもある小学生のSTEAM教育にもつなげていきたいと思っています。

シャーク:1年目は午前と午後に授業があって、その後グループワークをしたり、KMDのプロジェクトルームで別プロジェクトの学生と交流していました。その後GIDプログラム(デザイン・文化・産業の中心である3都市を結ぶデザイン教育のプログラム)でパートナー校のあるロンドンとニューヨークで過ごし、5月に日本に戻ってきました。今は、自分の研究と論文執筆に集中しています。

ーKMDに入ってみて驚いたことは?

シャーク:ヨーロッパやアメリカの大学はとにかく宿題が多くて大変です。毎日徹夜してがんばって授業に行って発表する。KMDは全く違うので驚きました。コンセプトを学んで、自分のプロジェクトは自分で考えるスタイル。

チェック:先生がさまざまな分野でよいコネクションを持っているので、研究のためによいパートナー企業を見つけてきてくれます。今は、フィールドワークで毎週老人ホームに通って、医師が入所者を検診する様子を調べていますが、それもパートナー企業の協力を得て行っています。

ー言葉の問題はありますか?

チェック:少しだけ日本語が話せるので、生活も研究もなんとかなっています。ただ、研究対象である日本の高齢者とのコミュニケーションは日本語が堪能でないと難しいので、パートナー企業に助けてもらっています。

シャーク:全く日本語を話せないと生活面では少し苦労するかもしれません。その場合は、一緒に役所に行ったり、家賃の払い方を教えたり、お互いに助け合っていますね。

刑部:英語と日本語が基本ですが、留学生が多く所属するプロジェクトは完全に英語だったりします。世界中の様々な国から留学生が来ているので、英語以外の多様な言語も常に飛び交っていて、とてもグローバルです。

ー印象に残っているイベントなどはありますか?

刑部:やはりKMDフォーラムですね。学生のお祭りであり、研究成果発表の場です。学生が主体となってイベントをマネジメントし、広報もします。私もコアメンバーとして半年前から準備をしてきました。今年は10周年記念としてKMDの軌跡を紹介したり、IDEOのティム・ブラウン氏の基調講演を行い、1,000人以上が来場して盛り上がりました。準備は大変ですが、来場者から自分の研究についてフィードバックを得られたり、たくさんの人が集まるこの機会を生かして研究データを取ることもできるんです。

ーこれからKMDに入りたいと考える人のためにアドバイスを教えてください。

シャーク:入学する前に、できるだけ早く、自分のテーマを決めること。2年という時間は本当に短いので。

小宮:KMDの説明会を聞いて「自分に合っている」と思ったら、まずはそれが大きな一歩です。入ってからは、「僕はこんなことをやってきたから、一緒に何かやろうよ」という自己表現、自己主張が大事かもしれません。

中村:KMD以外の場所でのインターンや活動を生かして、学生同士で新しいプロジェクトを立ち上げるケースもけっこうありますよね。

刑部:KMDにはコラボレーションやチャンスがいっぱいあります。でも誰かが与えてくれるわけではないので、自分で掴まないといけない。学校というよりは大きなコミュニティという感じなので、自分からアクティブに動ける人でないと、チャンスを逃してしまうかも。でも、楽しく積極的に行動できる人は、必ず花開くはずです。

ーこれからやりたいことを教えてください。

チェック:私は勉強が好きなので、これからも色々な研究を続けていきたいと思っています。

中村:エンジニアとしてネットワーク系の企業に就職します。KMDで培ったコミュニティを生かして社会貢献をしていきたいです。

刑部:来年度からは、現在勤務している会社のeducation specialistとして働いたり講師として活動したりすると同時に、KMDの博士課程に進学することになったので、今の研究をより発展させて専門性を磨いていきたいです。

シャーク:私は憧れていた日本のゲーム会社に就職が決まりました。ゲームビジネスの企画制作を通じて、世界中のゲームを繋げていきたいです。

小宮:電子制御から、VR、AI、ブロックチェーンまで、とにかく色々なことに触れてきました。それらを生かしながら、「社会を少しでも豊かにする」というビジョンとともに、さまざまな人を繋げる役割を担っていきたいです。

※本記事は2018年11月に取材したものです。