KMDで学ぶ日々をどのように過ごしている?
将来の夢は?
5名の学生たちが本音で語ります。

加藤大弥
日本
博士3年
参加プロジェクト:Network Media

張 紘ヨク
台湾
修士2年
参加プロジェクト:OIKOS

鍋島純一
日本
修士2年
参加プロジェクト:Embodied Media

池田梨花
日本
修士2年
参加プロジェクト:Global Education

クレクキョティス・ハラランボス(ハリー)
ギリシャ
修士2年
参加プロジェクト:Embodied Media
―KMDに入学した理由を教えてください。
加藤: 僕は入学当初VRとARを研究したくてKMDを選びました。修士から博士課程まで5年間KMDにいます。今の所属プロジェクトはNetwork Mediaで、メディアとインターネットの関わりについて研究しています。
ハリー: KMDに来る前にギリシャとドイツで建築や映画製作を学び、プロの映画製作者として働いていました。その後デザインのバックグラウンドとメディアを融合する方法をみつけるために、メディアデザインに転向しました。日本でリサーチをしたくて複数の大学を検討しましたが、より国際的なコミュニティ環境が整っているのと、身体性メディアこそ探し求めていたものであると感じ、KMDに決めました。
鍋島: 大学では経営学や統計学を学びながら、個人的に新しいスポーツをつくる活動に取り組んでいました。就職も決まっていましたが、ものをつくることにどっぷり浸りたいと思っていたときに、知り合いからKMDを紹介してもらいました。
張: 日本で玩具やフィギュアをつくる仕事をしていました。鍋島さんとは逆で、ずっとものをつくる仕事をしてきたけれど、もっと上流のことを知りたいと思って日本の大学院に行くことにしました。KMDに決めたのは、違う分野の人が一緒に研究していることに魅力を感じたからです。
池田: 私は大学時代に、不登校や引きこもりの子どもを支援する活動をしていました。どうしたらその人たちにもっと違う教育体験を提供できるかと考えて、最新のテクノロジーに触れたり、魅力的な学習をつくるプロセスを勉強したいと思いました。大学時代のメンターにKMDのことを教えてもらって興味を持ちました。

―普段はどのような学生生活を送っていますか。
ハリー: 私はキネティック(動的)インタラクティブ空間についての研究をしていて、今は修士論文のためのプロトタイピングが佳境です。ただ研究室にこもっているのではなく、フィールドワークとしてデザインや建築の展示を見に行ったり、日本の伝統文化にも興味があって、和太鼓や三味線のグループでも活動しています。睡眠時間を確保するのが大変です(笑)。
鍋島: 僕は今、人間の尻尾をつくる研究をしています。KMDにあるハッキングスタジオという工作室でずっと作業していますが、それ以外は、課外活動として社会福祉と絡めて新しいスポーツをつくったり、社会人チームでハンドボールをやっています。
池田: 今は、自分がつくった教育プログラムをベトナムの孤児院で実行する準備とカンファレンスの発表準備で忙しくしています。それ以外はプロジェクトのメンバーと交流したり、KMDにあるメディアスタジオで機材を管理するアルバイトをしています。
加藤: 僕は博士課程なので、KMDでは給料をもらってリサーチャーとして働き、他大学でもアシスタントや非常勤講師として授業をしています。博士課程ではそうした働く学生や、社会人も多いのではないかと思います。

―KMDで印象に残っているイベントやプログラムはありましたか。
加藤: 毎年リアルプロジェクトの研究成果を発表する「KMDフォーラム」はほかにはない楽しいイベント。最初に参加したときは、留学生と英語で話す機会がすごくて多くて圧倒されました。
池田: KMDとスタンフォード大学による「ジョイントプロジェクト型グローバルラーニング」というプログラムですね。日本で2週間、アメリカに2週間滞在し、スタンフォードの学生と一緒に本場のデザイン思考を学びながら新しいプロダクトをつくりました。とても楽しかったです。
張: 僕は、「GID(グローバルイノベーションデザイン)」という交換留学のプログラムで、KMDとニューヨークとロンドンの3拠点に滞在して学びました。欧米に行くのが初めてだったこともあり、多様なカルチャーに触れて刺激を受けました。
鍋島: イベントではないですが、1年次の「イノベーションパイプライン」という必修授業が強く印象に残っています。KMDで必要なデザイン、テクノロジー、マネジメント、ポリシーについて学び、最終的にチームでプロトタイプ制作に取り組み、プレゼンまでします。バックグラウンドの全く異なる学生たちと密度の濃い議論をし、刺激的な時間でした。

―海外学生とのコミュニケーションはスムーズですか。
池田: 入学したときには英語力が全くなく、しかも英語しか使えないプロジェクトに所属しました。片言でコミュニケーションするうちに、周りもサポートしてくれて、英語力も高まったのではないかと思います。
加藤: 最低限の英単語と身振り手振りでなんとかなるものです。自然に単語も覚えていくし、困ったら一緒に飲みに行くのがおすすめです。
ハリー: プレゼンやリサーチでは多言語のチームでコラボレーションします。日本語は難しいですが、日本人の友人や学生とできるだけ日本語でコミュニケーションを図り、日々勉強しています。海外学生とは英語、ドイツ語、そして時にはスペイン語で会話しています。とは言え、文化的背景まで理解しないと深い意思疎通はできないと痛感していて、いつもベストを尽くしています。文化を理解することと言語を学ぶことはセットだと思っています。

―これからKMDを目指す人に向けてアドバイスをお願いします。
加藤: KMDは教授陣も含めて、その人に「あう、あわない」がはっきりしている学校。入学を決める前にKMDのこと、教授のこと、研究内容などをしっかり調べたほうがいいと思います。
張: ウェブサイトや説明会だけでなく、実際にKMDフォーラムでリアルプロジェクトの成果を見たり、在学生に話を聞く機会をもつことが大事です。
鍋島: 入学後はあっという間に2年間終わってしまうので、有意義な時間にするためには、「自分はこれをやりたい」というイメージを掴んでおくことですよね。
池田: KMDは全部をなんとなくこなせるよりも、ひとつの強いところを使って皆とコラボレーションしていくことに意味があります。KMDを目指す人は自分の強いところに焦点を当てて、磨いていくといいと思います。
ハリー: 入学したら、KMDが提供するプログラムや環境をよく理解し、あらゆるスタジオやラボなども使い倒して自分のプロジェクトに生かしてください。KMDはたくさんのリソースを提供してくれます。有効に活用してください!
―将来の夢を教えてください。
池田: 不登校や教育格差に関心があってKMDに入り、その気持ちは変わっていません。これからもそうした子どもたちの教育を支援したり、将来的には、自分のしたい学習をできるような教育機関をつくりたいです。
ハリー: デザインとテクノロジーを融合し、分野の垣根を超えたプロジェクト、とりわけテクノロジーをインビジブル(不可視化)していくことにフォーカスしたもの、つまり目には見えないけれどそこにあって、人々の生活をよりよくしていくようなプロジェクトに取り組んでいきたい。すでにここで活気ある研究グループに所属していて、リソースや機会にも恵まれているので、引き続き日本で研究を続けていく予定です。
鍋島: 入学したときはまさか尻尾をつくるとは思いませんでした。自分が考えたことを形にできるのは、とてもわくわくします。卒業後は社会人として働きますが、これからもライフワークとしてものをつくり続けていきたいです。
加藤: KMDに来て思ったのは、これだけ多様な人たちが集まっているのに、本当にみんな仲がいいんですよ。僕は日本が好きだけれど、日本の組織は競争ばかり。もっとお互いのことを知って、みんなが仲良くできる国をつくりたいです。
張: ずっと日本で玩具の仕事をしてきましたが、閉鎖的な雰囲気がありました。それはほかの業界も変わらないと思います。KMDではたくさんコラボレーションの機会があって多くを学んだので、これから色々な業界の人たちが手をつなげるように、貢献していきたいです。

※ 本記事は2019年11月に取材したものです