KMD学生座談会2024

KKMDで学ぶ日々をどのように過ごしている?
将来の夢は?
5名の学生たちが本音で語ります。

平松 燿

韓国

博士 1年
参加プロジェクト:CREATO!

上山 恵美子

日本

修士2年
参加プロジェクト:Network Media

沈 襲明

中国

修士2年
参加プロジェクト:Embodied Media

斧田 悠

日本

修士2年
参加プロジェクト:Embodied Media

清水 将矢

日本

修士1年
参加プロジェクト:Embodied Media

―みなさんの経歴とKMDに入学した目的を教えてください。

平松: 僕は医療系大学卒業後、鍼灸師として活動していました。プライベートでは、友人の勧めでeスポーツに興味をもち、大会を観戦して大きな感銘を受けました。そこで、自分の専門領域でeスポーツの世界に貢献できないかと考え、大学院で選手のフィジカルケアとマネジメントを学んだ後、さらに研究を深めるべくKMDに入学しました。

上山: 私は約10年間舞台俳優をしていて、演者を続けていくうちに舞台芸術にまつわるコミュニケーションのあり方を探求してみたいと考えるようになりました。KMDであれば、多様な国籍や経歴の人たちが集まっており、ともに学ぶことで新な視野やアプローチを身につけられると思い入学しました。

エリザベス: イギリスの大学では経済学を学んでいました。大学卒業後、自分が何をしたいのか、何ができるのかわかっていませんでした。ただ、IoTなどのテクノロジーを医療に活用する「MedTech」には興味があったので、学校を探していたところ、KMDに行き当たったんです。

斧田: 私は美術大学を卒業して、ミニチュア制作会社でデザイナーをしていました。そこで展示の企画に向けて、ARなど先端技術の活用を検討していたときに知識不足で断念したことがとても悔しくて。これを機に学ぼうと考えていたとき、次世代の音楽体験を形にしたエンハンスの水口哲也さんの作品に出会って衝撃を受けました。水口さんがKMDの特任教授を務めていることを知り、入学を決めました。

清水: 僕は、建築設計者として設計事務所に勤めている中、コロナ禍で在宅勤務を始めた時に、建築が社会において果たすべき役割を改めて悶々と考え始めたのがきっかけです。そんな時に僕も水口哲也さんの作品をみて、「もっと人の心動かす建築体験がつくりたい」、「建築とメディアデザインの融合や建築領域の拡張を模索したい」と思い至りました。

―日頃のご活動と、それぞれ所属しているリアルプロジェクトでの研究について教えてください。

平松: 大学附属の鍼灸院では鍼灸師、eスポーツの専門学校では講師を務めながら、eスポーツにおけるヘルスケアとマネジメントの研究を進めています。eスポーツ領域の学術研究は黎明期ですが、そのなかでも業界の健全な発展に貢献すべく、包括的なマネジメントモデルについて研究しています。

上山: 研究の傍ら、インターネット生配信番組での進行や新聞社へのエッセイの寄稿も行っています。演技指導における円滑なコミュニケーションについて、デジタル技術を用いた指導法などを模索しながら誰もが実践できるように方法論として確立したいと考えているところです。

エリザベス: 私は博士3年生なので、論文やレポート作成に追われる日々です。普段は、竹芝にあるKMDの研究拠点「Cybernetic Being Lab」に入り浸って、AR技術を活用して、認知症患者などが感じる視覚的な困難を擬似体感するプログラム「Dementia Eyes」をサポートする研究をしています。

斧田: 私も平日の朝から夕方まで竹芝のラボにいて、実験や論文、研究レポートの執筆に取り組んでいます。VRを用いて身体の知覚を擬似的に変化させ、自分の体が小さくなったり大きくなるように感じる研究をしています。自分とは違う視点に入っていくような体験を実用化して、次世代のエンターテインメントにつなげたいと考えています。

清水: 僕は建築設計の仕事を継続しながら、日吉キャンパスの図書館で作業をしたり、竹芝のラボで研究する毎日です。テクノロジーを溶け込ませた空間の中で人の五感を刺激したり、行動変容を穏やかに促すことで、建築空間の価値向上を実現したいと思っています。広義には、建築設計者という職能そのものの拡張にも取り組めたらと考えています。

―みなさんにとってKMDはどんな場所でしょうか?

平松: 「君のやりたいことをやっていいよ」と言ってくれる場所です。例えば僕には工学系の知識はないけれど、ここにはさまざまな専門領域を持つクラスメイトやプロジェクトメンバーがいて、全力でサポートしてくれたり、目的が合致すれば一緒に研究を進めたりすることもできます。必要に応じて外部企業との連携を先生方が後押ししてくれることもあって、自分の研究をどんどん進められることが魅力です。

上山: 本当にそのとおりだと思います。私の所属するリアルプロジェクトではインターネットを主に扱うのですが、私はまるで門外漢でした。でも、先生をはじめ同級生や先輩が技術を補ってくれます。私も微力ながら自分の得意な領域でみんなの役に立てたら嬉しいし、ともに高めあえる環境をすごく心地いいと感じています。

エリザベス: ここには興味深いリアルプロジェクトがたくさんあるので、目的に応じてプロジェクトを変える人もいます。私にとってKMDは、自分でもわかっていない長所を理解してくれて、可能性を引き出し、さらに成長させてくれるところだと感じています。

斧田: 国籍もバックグラウンドも、価値観もバラエティーに富んでいて多様性のある場所。そういう人たちとディスカッションしたりするうちに、相対的に自分がどんな人なのかがわかるようになってくることがとても面白い体験だと感じています。

清水: 僕はSFCの大学と大学院で建築を学んでいたのですが、どうしても同じ研究領域の仲間と過ごすことが多かったです。KMDでは、自分と180度異なる考えや目的を持った人と一緒に授業を受け、すぐ近くでコラボレーションができるため、非常に面白い環境だと感じています。

―では最後に、KMDへの入学を考えている人にメッセージをお願いします。

平松: KMDに入ったら自分にとっての当たり前が、当たり前ではなくなることを覚悟してください(笑)。さまざまな制約下でリスクを鑑みて生体に適切な介入をし、最大限の成果を発揮することが、医療の世界に身を置く僕にとっての当たり前でした。でもそれは医療における一面でしかなく、いろんな視点の人と触れ合い考えを深めることでこれまでの常識は破壊されますし、それを面白がれる人たちばかりが集っています。それが、僕にとってKMDでの最も価値ある体験です。

上山: 私も、正しいと信じていたことに違う側面があることをKMDで気づかされました。それに、自分のやりたいことを思いがけない方法で発展させることができることも知りました。解決したい課題や目的意識が明確に定まっている人ならば、入学後に可能性が広がると思うので、社会人を経験してからの入学もおすすめしたいです。

エリザベス: 私は逆に「自分にできること」を見つけたくてKMDに入学しました。そしてさまざまなプロジェクトに参加するうちに自分ができることを発見しました。私にもできたから、あなたにもできるはず。KMDならすばらしいプロジェクトを達成できると信じてほしいです。

斧田: 毎日が新しい発見の日々です。KMDでは自分の考えを発信したり人の話を聞く機会がとても多いので、入学したらぜひいろんな人に積極的にアプローチをして、さまざまなことにトライしてほしいです。きっと、実りのある学生生活になると思います。

清水: 僕はまだ入学して間もないですが、KMDでの授業やプロジェクトは、社会課題を見つける良い訓練になっています。これまでの研究や社会人経験とここで見つけた新たな問いをうまく接続させることができたら、これまでにない新しい価値観を世の中に還元できるんじゃないかと思います。ただ、面白そうなプロジェクトがたくさんあるので、どれを選ぶべきか……まだ迷っています(笑)。

※ 本記事は2024年3月に取材したものです。