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2025/06/12
伝統工芸のデジタル技能伝承に向けた共創プロジェクト
『伝統工芸のデジタル技能伝承に向けた共創プロジェクトをJAPAN CRAFT EXPO 日本工芸産地博覧会 in 大阪・関西万博2025 に出展します』 一般社団法人日本工芸産地協会、有限会社育陶園、慶應義塾大学、名古屋工業大学、株式会社commissureは、日本の伝統工芸産業の未来を探求するため、2024年4月より、沖縄にて300年の伝統を有する壺屋焼の窯元 育陶園を舞台に、デジタル技術を用いて職人の技能を記録し、次世代に伝える「CrafTouch」プロジェクトに取り組んできました。 このたび、2025年6月16日〜18日に、大阪・関西万博2025の一環として開催される「日本工芸産地博覧会」(主催:一般社団法人日本工芸産地協会、読売新聞社)において、本プロジェクトの成果を展示発表することになりましたので、以下のとおりご案内いたします。 ◆プロジェクト概要: 少子高齢化が加速する中、日本各地の伝統工芸は後継者不足により存続の危機に晒されています。AI時代の到来により、様々な情報がAIにより生成されるようになった現在、伝統工芸の分野においても、テクノロジーとの共存はもはや他人事ではありません。本プロジェクトでは、デジタル技術によって人の身体感覚を記録・再生する「ハプティクス」の最先端技術を伝統工芸の現場に導入し、職人の技能の保存や後継者への技能伝承、時間と空間を超えた技能の伝達による世界への発信に取り組むことで、次の世代への工芸技能の伝え方を探求します。 ◆展示概要: 「Project Cybernetic being – ロボットと触覚技術による職人技のデジタル共有」   日時: 2025年6月16日(月)~18日(水) 09:00-21:00 ※最終日のみ18:00まで   会場: 大阪・関西万博2025「JAPAN CRAFT EXPO2025」(EXPOメッセ「WASSE」内)  URL: https://kougei-sunchi.or.jp/expo_conference/2074/ ◆これまでの取り組みの経緯: 2022年7月、日本工芸産地協会 事務局長 原岡知宏と、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授 南澤孝太が発起人となり、Project Cybernetic beingの研究拠点「Cybernetic being Lab」(東京・竹芝)において、ハプティクス(触覚技術)をはじめとしたサイバネティック・アバター技術と工芸とを繋ぐワークショップを開催し、工芸とデジタル技術の融合で紡がれる未来について議論を交わしました。この議論を受け、日本工芸産地協会とProject Cybernetic beingとの共創プロジェクト「CrafTouch」がスタートし、第1弾として堀田カーペット株式会社との共創プロジェクトが開始(https://kougei-sunchi.or.jp/news/1491/)。織物を踏みしめる感覚を分類・再現することに取り組んだ成果は、2023年11月に大阪・万博記念公園で開催された「日本工芸産地博覧会2023」に出展されました。 このCrafTouchプロジェクトの第2弾として、2024年4月より、沖縄に300年伝わる壺屋焼の窯元、育陶園を舞台に陶芸職人の手がもつ精緻な技を記録し伝承することを目指した共創プロジェクトを開始し、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 Embodied Media Project(研究室主宰者=南澤孝太教授)と名古屋工業大学 Haptics Lab(研究室主宰者=田中由浩教授)の研究チームが、育陶園の工房を度々訪問し、フィールドワークを通じて、職人がもつ「言葉にならない」技の計測に取り組みました。 育陶園工房に訪問し職人の技能を計測している様子 ◆技能伝送技術について: 本プロジェクトでは、伝統工芸職人の技能をデジタル技術によって記録・伝送するために、人が手や指を通じて感じる「触覚」や腕に込めた「力覚」を手軽な手法で計測し記録するため、株式会社commissureにより開発された装着型ハプティックセンサ「SenseFuse™」を用いて、職人が普段の陶芸の制作工程の中で行っている動作や感覚を記録しました。また、装着型ハプティックディスプレイ「FeelFuse™」を用いて、記録した力触覚のデジタル情報を人の手や腕に再現し、実際に身体で感じられるようにすることで、職人のもつ「コツ」や「感覚」を言葉を用いずに伝えられる技能伝送システムを開発しました。さらに、職人の動きと感覚の情報をもとに、陶芸技能を伝えるロボットアバターを開発し、そのロボットアバターを陶芸職人と一緒に操作することで、職人といわば二人三脚の状態で、職人の技を直感的に体感し共に作品を作り上げることができる「技能融合サイバネティック・アバター」を構築しました。 2人の職人の間で感覚を共有 ハプティクス技術による 記録された技能の体験 技能融合 サイバネティック・アバター フィールドワークの記録映像 映像リンク: https://youtu.be/kExtdaVmlt8?si=Cd-_s-M2OIn9C13N ◆共創メンバーからのメッセージ 原岡知宏(一般社団法人日本工芸産地協会 理事) 本プロジェクトは2022年7月、日本工芸産地協会とCybernetic beingとで共同開催したワークショップをきっかけとし、工芸とハプティクスとの融合で未来の可能性をさぐる取り組みとして始まりました。第一弾の堀田カーペット(大阪・和泉市)との研究を経て、2024年より第二弾としてスタートしました。技能伝承は工芸業界における大きな課題のひとつであり、解決のヒントを発見する一助となることを期待しています。 高江洲若菜(有限会社 育陶園 代表取締役) 時代の変化により、限られた時間の中で高い職人技を継承することが難しくなり、育陶園でも世代間の技術力の差が課題となってきました。熟練の職人たちの技術を今にどう繋いでいくか。その手立てを探る挑戦として、今回のプロジェクトに参加しました。経験と体感を通じて蓄積されていく技術に加え、この新たな取組の導入が、これからの職人育成に繋がっていくことに期待したいです。 南澤孝太(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科・教授/JSTムーンショット研究開発事業目標1・プロジェクトマネージャー/2025大阪・関西万博 日本館基本構想委員) デジタル技術の急速な発展により、人の様々な行動や感覚、経験そのものをデジタル空間に記録し、時間と空間を超えて伝える技術は、もはやSFの話ではなく現実の出来事となりつつあります。脈々と続く数百年の歴史を持つ伝統工芸が、近未来のテクノロジーをどのように取り込み、進化していくか。本プロジェクトを通じて、伝統と先端が出会い、交わり、共に未来を紡いでいく、そのミャクミャク感を感じていただければ幸いです。 田中由浩(名古屋工業大学 電気・機械工学類・教授/稲盛科学研究機構・フェロー) 職人の技をはじめ身体感覚は、言葉で表現しにくく、個人の中にとどまっていました。しかし、その一端を記録し、他者に伝えることが可能になりつつあります。本プロジェクトはその有用性と可能性を広げてくれました。身体感覚の共有技術は、世界中の人々をつなげ、異なる感性や技の掛け合わせを可能にします。これにより、多様な能力の発揮や新たな技能の創発、個々人の創造性が一層育まれる、「1+1>2」の実現を目指していきます。 堀江新(株式会社commissure代表取締役CTO/慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任助教) 身体の感覚は他者に伝えることが困難とされてきましたが、私たちはテクノロジーの力でその常識を覆そうとしています。多くの協力者のご支援により実現した本プロジェクトでは、触覚や体性感覚を記録・共有する技術を実験室から実際の現場へと展開することで、その大きな可能性と貴重な知見を得ることができました。今後も継続的な研究開発と社会実装を通じて、身体感覚の共有をより身近で日常的なものにしていきたいと考えています。 ◆参画チーム  一般社団法人 日本工芸産地協会 コンセプトは、“産地の一番星が産地の未来を描く”。「産地の一番星」たる各産地の企業同士が、衰退の一途をたどる日本の工芸や産地の現状に危機感を持ち、業種や地域の枠を超えて互いに切磋琢磨しながらそれぞれの産地の未来を切り開いていくことを目的として2017年に設立。2023年現在、19社のものづくり企業が加盟。各産地のモデルケースを共有する機会としてカンファレンスの企画運営や、工芸・産地に関するコンサルティング、講演などの事業を行う。 壺屋焼窯元 育陶園 育陶園は、沖縄・壺屋の地で300年以上にわたり「やちむん(壺屋焼)」の伝統を受け継ぐ窯元です。創業60周年を迎えた現在も、先人たちの技術と想いを大切にしながら、地域や人々とのつながりを大切にしたものづくりを続けています。これからも、壺屋焼の魅力を広め、未来へとつなげていく活動を展開してまいります。 Project Cybernetic being ムーンショット型研究開発事業ムーンショット目標1「人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」の研究開発プロジェクト「身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発」(プロジェクトマネージャー:南澤孝太(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科・教授))では、 人々の身体的経験や技能をネットワーク上で流通・共有し、障害当事者や高齢者や子どもたちを含む多様な人々が自在に行動し社会参加できる未来社会を目指して、身体能力の限界を突破するサイバネティック・アバター技術の研究開発と社会実装に取り組んでいます。 18の研究機関・研究室・スタートアップ企業(2025年6月現在)が参画する本プロジェクトにおいて、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 Embodied Media Project は「身体的共創を生み出すCA接続基盤技術の構築と応用展開」を、名古屋工業大学 Haptics Labは「身体の多様性を包摂する技能共創技術の開発」を担当し研究開発と社会実装に取り組んでいます。 株式会社commissure 2023年1月設立。「身体感覚を保存・再生・生成可能にし、感覚資産を活用可能な社会にする」をミッションに掲げ、触覚提示技術とセンシング技術を核としたインターフェースや身体感覚共有システムを研究開発。対象を自分の身体の延長として自在に理解・操作できる新体験の実装を目指すハプティクススタートアップ。Project Cybernetic beingの産学共創コミュニティである身体共創社会推進コンソーシアム会員。 ________________________________________ 【出展に関してのお問い合わせ先】 ⼀般社団法人日本工芸産地協会・事務局 〒630-8144 奈良県奈良市東九条町1112-1 E-mail:info@kougei-sunchi.or.jp  担当:事務局長 原岡知宏(直通 070-1369-8137)...
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2025/06/11
Cybernetic being Meetup vol.06 『老いを超える軽やかな身体』
Cybernetic being Meetup は、科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業目標1「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」研究開発プロジェクト「身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発」“Project Cybernetic being”が主催するミートアップイベントです。 第6回目となるCybernetic being Meetup vol.06では『老いを超える軽やかな身体』と題して、感覚刺激を提示する装置で他者の感覚を受け取り、他者と能力を共有することで、衰えゆく身体状態であるフレイルの予防や幼児期の教育に活かす未来とその可能性について議論します。 Project Cybernetic beingのプロジェクトマネージャーを務める慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)の南澤がモデレーターを務め、ゲストに、本プロジェクトの課題推進者である、名古屋工業大学 電気・機械工学科 助教の湯川光氏、名古屋大学 予防早期医療創成センター 教授の平田仁氏を招いて、年齢や病気など関係なく助け合え、いつでもチャレンジできる社会についてみなさんとで考えます。 ※当日のイベントでは、新しい身体を可能にする体験型展示を行います。(展示を体験いただける方は、会場のみとなります。ぜひ会場にお越しください。) ※※本イベントは日本語のみの開催となります。 ■日時・場所: 6/19(木) 18:00-20:00(開場17:30-) 会場:FabCafe Naogya+オンライン配信 〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3丁目6−18 レイヤードヒサヤオオドオリパーク ZONE1 ■イベントタイムテーブル: 17:30-18:00 開場 18:00-18:10 オープニング(小原/南澤)  18:10-18:30 インプットセッション1(湯川)  18:30-18:50 インプットセッション2(平田)  18:50-19:25 クロストーク(モデレーター:南澤)  19:25-19:30 クロージング  19:30-20:00 ネットワーキング ■イベントリンク: https://cybernetic-being.org/activities/cybernetic-being-meetup-vol6/ ■イベント参加方法: 会場+オンライン 参加費無料 会場定員60名 申し込みフォーム https://loftwork.formstack.com/forms/cybernetic_being_meetup_vol06   オンライン配信URL https://www.youtube.com/live/SXWAtXx9ibo
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2025/06/10
RISOU PROJECT(リソウ・プロジェクト)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)は、2025年の国際バイオデザインチャレンジ(International Biodesign Challenge)ニューヨーク大会でファイナリストに選出されました。 KMDチームの応募作品は、日本原産でありながら海外では侵略的外来種とされる海藻「ホンダワラ(Sargassum muticum)」を活用した革新的なプロジェクトです。チームは、この環境問題を「生けるバイオテキスタイル」へと転換し、海との深い文化的つながりを「適応型ユニフォーム」に織り込みました。抽出した天然成分は、紫外線防護・抗酸化・抗菌効果を持ち、外来種問題と農業従事者の健康・安全ニーズの双方に応えます。海藻由来のゲルやコーティング、3Dプリント生地を用いたRisouの衣服は、日光や汚染、着用者の行動に反応し、酸性水では色が濃くなり、紫外線を遮断し、環境配慮が損なわれるとほつれて土に還るなど、自然と人間の間に結ばれた「生分解性の約束」として地球に戻ります。 衣服が地球への責任を可視化する未来を描くとともに、RisouはSEGOのユース・コクリエーションラボと連携し、バイオマテリアル・イノベーションや循環型デザイン、日本の「自然(じねん)」哲学を学ぶ教育プラットフォームとしても機能します。理藻の未来は海への敬意から始まることを、次世代に伝えています。 --- 国際バイオデザインチャレンジ(IBC)について  国際バイオデザインチャレンジ(IBC)は、生物学・デザイン・エンジニアリングの交差点で、大学チームが革新的なソリューションを構想・設計・プロトタイプ化する世界的なコンペティションです。学生たちは科学者やアーティスト、業界専門家と協働し、サステナビリティや健康、環境など現実的な課題にバイオテクノロジーの社会的可能性を示す創造的なプロジェクトで挑みます。 https://www.biodesignchallenge.org/ KMD SAMCARAラボについて   SAMCARAラボは、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)に設立された研究グループで、循環型デザイン、バイオデザイン、マテリアル・イノベーションを専門としています。学際的なコラボレーションを重視し、循環経済のための新しい言語や方法論を探求。持続可能な素材や生物由来のソリューション、先端技術の統合に取り組み、複雑な社会・環境課題にクリエイティブかつ横断的な専門性で応える次世代デザイナーの育成を目指しています。 https://samcara.org/
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The Keio University Graduate School of Media Design (KMD) addresses real-world challenges while envisioning optimal futures. Our mission is to pioneer "media design" - creating new connections between people and their environments - while developing "media innovators" who transcend traditional disciplinary and national boundaries.